差しだされるアンパン一片

天文学的数字の量の記事を殴り書きたい。

「日本へようこそ」系テレビ番組のフシギ

「日本へようこそ」系のテレビ番組に登場する外国人の人種

 まず、その手のテレビ番組にでてくる外国人のほとんどは、いわゆる白人種とよばれる人たちだ。奇妙である。世界にはさまざまな人種が存在する。また、さまざまな人種の人たちが大勢、日本を訪れている。だが、そういう番組に登場するのは白人ばっかりだ。では、なぜそのようなことが起こるのだろう。来日する外国人の割合で、もっとも多い人種が白人種だからであろうか?

だが、それは違う。

訪日外国人の人種の内訳

まず、2018年の訪日外国人の国籍別の内訳をみてみよう。

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この円グラフでは、台湾や香港を国として内訳にいれているが、これは情報元の日本政府機関が出している、国籍別訪日外客数という統計表を元に作成しているので、文句があるならそちらに言っていただきたい。下らないブラックジョークはさておき、上の表をみるかぎり訪日外国人の多くがアジア系のように見える。では、ほんとうにそうか?それは次の表ではっきりする。

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申し訳ないが、これは2017年版である。参照していたデータになぜか、2018年の総数をまとめたものが記載されていなかったので、面倒なため2017年の情報を拝借した。このグラフをみて、感覚とくいちがうと思う人がいるかもしれない。それはきっと、アジア人は顔が日本人と似てるので、白人を町中でみたときほど脳に焼きつかないからではないだろうか。それはそうと、なんと訪日外国人のうち、約86%がアジアの国々から来ているらしい。これらのグラフは、訪日外国人の人種の内訳とイコールになるわけではない。なぜなら、アメリカのように、様々な人種が同じ国で生活しているような国の場合、そこから来たひとがその地域の多数派の人種とは限らないからだ。とはいえ、地域別の内訳と人種別の内訳には、非常につよい相関関係があると想像できる。とくにアジア地域の場合、アメリカのような人種のルツボ国家はほとんどない。以上をもって、訪日外国人の人種でもっとも多いのは白人種ではないということが分かった。

では、なぜ白人ばかりが登場するのか?

はじめに言っておくと、筆者はテレビマンでもなければ、その関係者でもない。ここから書くのは、あくまで筆者の想像である。テレビがこうなってしまった理由はおそらく、一つではないだろう。

  • 一つ目の理由は、白人を取材する際に必要な通訳の確保が容易ということ

そもそも近現代の世界情勢において、日本以外のアジア地域が力を増してきたのは、比較的最近のことである。今では世界中で猛威をふるう中国さんも、世界全体での存在感が増してきたのは、ここ20年ほどであろう。他のアジア諸国に関していえば、さらに最近のことだ。なので通訳の需要において、アジア系の言語よりヨーロッパ系の言語の通訳の需要が高い期間がながかった。期間がながかった分、それだけ多くの通訳者存在しているということである。そのうえ、ヨーロッパ系の人なら、英語を扱える人が大勢いるので、英語ができる人を一人連れていけば、多くのひとに取材をおこなえる、という理由もあるだろう。

  • 二つ目の理由は、多くの日本人が白人コンプレックスをもっているから

残念なのか分からないが、でも多分残念なことに、いまだに多くの日本人が白人コンプレックスをもっている。白人コンプレックスとは、白人に憧れる感情や、白人に認められたいという感情、というような、白人に対して抱く劣等感のことである。日本は明治維新以降、白人国家に追いつけ追いこせをモットーに、国家を運営してきた。その甲斐もあってか、アジア地域において強い存在感を放ってきたのは、おそらく事実であろう。だがその過程で、日本人には白人に対する、強いコンプレックスが芽生えてしまったのである。これは日本においてだけではなく、他のアジア諸国も同様に抱える、世界的な問題なのかもしれない。白人コンプレックスを抱く人が、白人が日本にきて、日本を褒めたり、日本に憧れたりしてくれる様子をテレビでみたら、一時的にコンプレックスがやわらぎ、快楽にひたれる。そういう人が大勢いれば、それが視聴率につながり、テレビマンはまた、白人ばかりを登場させる。つまり、視聴者がテレビに白人を求めているということである。

  • 三つ目の理由は、韓国人と中国人に対する負の感情

訪日外国人の数からみれば、韓国人や中国人がもっと登場してもいいはずである。だが、 残念極まりないことだが、2019年3月現在、日韓関係は非常に冷えこんでいる。まるで氷河期である。いや冗談じゃなくて。これは琴線に触れることかもしれないが、そもそも日韓関係というのは、近現代通して、あまりよろしくない。先の併合だ、植民地だ、とかより以前から、よろしくない。日本人は近現代において、朝鮮人に対しての民族差別意識があるのだ。こうなった理由はわからないが、事実はそうである。1923年に起こった関東大震災でも、朝鮮人に関しての悪いデマ情報が飛び交い、それにより多くの朝鮮人が殺されたりした。これは筆者の偏見かもしれないが、朝鮮人だって、日本人に対して、いいイメージをもっている人は、決して多くはないだろう。日中関係だって、現在はいい方に向かっているように見えるが、いつまた悪化するかもわからない。日本人と中国人の関係も、日本人と朝鮮人の関係によく似ている。長くなったが、つまり言いたいことは、テレビに中国人や韓国人を多く登場させても、かんばしい視聴率は期待できないということ。多くの日本人は、韓国人や中国人をテレビでみても、あまり喜ばないということだ。

※朝鮮という言葉が差別的な言葉だという人がいるのは知っているが、この記事の朝鮮という意味には、一切の差別的意味合いは含まれていない。

結論

うえの三つの理由により、テレビマンは、とりあえず白人をテレビに出しておけばハズレはない、という理屈でこういったテレビ番組には、白人が多く登場するのであろう。個人的には、マナー問題をおいておけば、隣国の人たちが日本にきてくれるのはいいことだと思っているので、ぜひ、そういった人たちにも焦点をあてていってもらいたいところだ。

この現象はテレビ番組だけではない

ところで、ビジネスの世界において、韓国や中国というのは、非常にメリットのある相手である。それだけではなく、他のアジア諸国に活路を見いだす企業だって多くあるだろう。だが上述の現象は、なにもテレビ番組だけで見られるものではない。企業や行政がつくるイメージビデオにも、白人ばかりが登場する。100%ではないが、その登場率は他の人種を圧倒している。結局のところ、日本人が思い浮かべる外国人のステレオタイプが、いまだに白人だということなのだろう。別に、日本国内でつかう映像なら、これで具体的な問題はおこらないだろう。だが、世界に向けて発信する映像でも、同じことをしている企業や行政を幾度かみたことがある。世界の人は、映像に日本人と白人が映っていれば、多様性が足りるとは思っていない。

さいごに

ここまで、「日本へようこそ」系テレビ番組のフシギについて書いてきたが、これらはあくまで、部外者の想像である、ということは強調しておきたい。だが、テレビ番組ひとつとっても、これだけ多くの考察ができるのだから、世の中いくらでも観察することはあるということなのだろう。